トライで取るか、キックで刻むか ― リーグワン2025-26、得点スタイルと規律に見る各チームの個性
同じ「得点」でも、その中身はチームによって大きく違う。トライで力強く取り切るのか、ペナルティゴール(PG)で手堅く刻むのか——。リーグワン2025-26のDivision1を、得点の“スタイル”と“規律”という切り口で、ScramHubの独自集計から見てみたい。順位表には出ない、各チームの意外な素顔が浮かび上がる。
「トライ型」の代表は王者・神戸
まずは、得点をどこから稼いだか。優勝したコベルコ神戸スティーラーズは、トライへの依存度が高い典型的な「トライ型」だった。
- シーズン通算トライ:112本(リーグ最多)
- ペナルティゴール:8本(リーグでも少ない部類)
トライを量産する一方でPGは8本と少なく、「反則からの3点」に頼らず、あくまでトライで押し切って得点を積み上げた。実際、総得点のうちPG・DGといったキックで稼いだ割合はわずか3%ほどとリーグ最少級で、神戸の得点がいかにトライ(とその後のコンバージョン)に支えられていたかが分かる。
「キックで刻む」ブラックラムズ東京
対照的だったのが、5位のブラックラムズ東京だ。
- ペナルティゴール:26本(リーグ最多)
- キック(PG・DG)由来の得点割合:約16%(リーグ最多)
PG本数はリーグで最も多く、総得点に占めるキック由来の割合もリーグで最も高い。つまり、トライで押すよりもPGで着実に3点を重ねる「キック型」の性格が、数字にはっきり表れている。もっとも、PGが多いことは戦略的な選択であると同時に、相手ゴール前でトライを取り切れずキックを選んだ場面が多かった裏返しとも読める。トライ数(66本)は上位に及ばず、狙えるところで確実に3点を拾う現実的な戦い方でシーズンを戦った。神戸とは正反対の得点スタイルだといえる。
コンバージョンの精度が光った埼玉
得点スタイルに関わるもう一つの指標が、トライ後の追加点(コンバージョン)の精度だ。挙げたトライ数に対してゴールをどれだけ決めたかを見ると、2位・埼玉ワイルドナイツがリーグ最高の水準を示した。
- コンバージョン成功率の目安(ゴール数÷トライ数):約76%(リーグ最高)
トライを取ったあとの2点をきっちり上乗せできるかは、接戦では大きな差になる。守備の堅さで知られる埼玉が、キックの精度でも上位だった点は見逃せない。
規律の明暗 ― 反則の少なさは順位と一致しない
最後に「規律」=反則の少なさを見てみると、意外な事実が浮かぶ。1試合あたりの反則数が最も少なかったのは、優勝した神戸でも2位の埼玉でもなく、5位のブラックラムズ東京(約8.8)だった。一方、反則が最も多かったのは6位の東芝ブレイブルーパス東京(約13.1)で、ちなみに東芝のPGはリーグ最少の4本と、こちらも極端な数字だった。
規律の高さは大切な要素だが、それだけで順位が決まるわけではない——というのが2025-26の数字が語るところだ。反則を最も抑えたブラックラムズが5位、規律で必ずしも上位でない神戸が優勝したことは、「規律の高さは勝利の必要条件でも十分条件でもない」ことを示している。反則の少なさは勝利を支える一因子ではあるが、それ単独で順位を説明することはできず、攻撃力や守備力と噛み合って初めて結果に結びつく。なお、反則数そのものも自陣で守る時間の長さなど試合展開に左右される点は割り引いて見る必要がある。
数字で見ると、観戦がもっと面白くなる
トライで取り切る神戸、PGで刻むブラックラムズ、キックの精度が光る埼玉——同じリーグを戦っていても、得点の作り方はチームごとにこれほど違う。次に試合を観るときは、「このチームはトライを狙っているのか、PGを選んだのか」に注目してみてほしい。その選択の裏にある各チームの“らしさ”が見えてくるはずだ。ここで紹介した指標は、リーグワン スタッツ分析のページで全チーム分を一覧できる。数字という切り口を持つと、ラグビー観戦はもう一段深くなる。
楕人(ScramHub編集部)
1980年代から日本ラグビーを追いかけて約40年。学生・社会人(オンワード オークス)から現在のキヤノンイーグルスまで、現地とテレビの両方で観戦を続けてきた一人のファン。カテゴリごとにバラバラだった日本ラグビーの情報を一か所に集めたいという思いで ScramHub を運営し、初めての人にも分かる観戦ガイドを書いています。
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